〈住宅で雨水利用〉雨水処理システムの仕組みは?メリット・デメリットや注意点を解説
突然ですが、皆さんは「雨水の利用」について考えたことはありますか?
自然資源の豊富な日本ではあまり意識しないかもしれませんが、昨今は水需要の逼迫が問題視されており、公共施設だけではなく一般住宅でも雨水利用のシステムを導入するケースが増えています。
しかし、まだまだその認知度は低く、どのような仕組みか知らない方も少なくありません。
そこで、今回は「雨水利用」「雨水処理システム」について、基礎知識やメリット・注意点を詳しく解説します。
これから新築住宅の建設を検討する方はもちろん、今のお住まいをリノベーションしたい方も、ぜひ参考にしてください。
●雨水処理システムは、環境面・防災面でのメリットをもたらします。
●私たち“フォレストブレス”が、1934年創業以来木材会社として培った知識と経験を活かし、自然素材にこだわった“あなただけの住まいづくり”をお手伝いします。
Contents
“雨水処理システム”とは?
「雨水利用」は、雨水を溜めて雑用水として活用する“雨水処理システム”を指し、今までは主に公共施設などへ導入されてきました。
そのきっかけは、2014(平成26)年に制定された「雨水の利用の推進に関する法律(通称:雨水法)」。
この法律は、近年の気候変動等に伴い水資源の循環の適正化に取組むことが課題となっていることを踏まえ、その一環として雨水の利用が果たす役割に鑑み、雨水の利用の推進に関し、国等の責務を明らかにするとともに、基本方針等の策定その他の必要な事項を定めることにより、雨水の利用を推進し、もって水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与することを目的としています。
(1)目的 (第1条)
雨水の利用を推進し、もって水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道、河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与。(2)定義 (第2条)
「雨水の利用」とは、雨水を一時的に貯留するための施設に貯留された雨水を水洗便所の用、散水その他の用途に使用することをいう。
公共施設への雨水処理システム導入が増えている中、最近は一般住宅へ設置するケースも増えています。
住宅においては、溜めた雨水を以下のような用途に活用します。
- ・お庭への散水、家庭菜園の水やり
- ・断水時・災害時の生活用水
- ・洗濯水
- ・トイレ
- ・その他雑用水
では、雨水を溜めて利用するまでのプロセスを見てみましょう。
〈集雨〉
住宅の竪樋(たてとい)から 雨水を集めます。
〈前処理〉
大きなゴミを取り除くために、前処理層の“上澄み”だけを雨水タンクに送り込みます。
〈雨水タンクで貯水〉
塩素消毒や活性炭濾過によって水質を安定させます。(制菌)
〈加圧・利用〉
ポンプで加圧して、タンク内の水を各場所へ送って利用します。
タンクは、地上に置く「地上設置型」と、地中に埋める「地下埋設型」があり、それぞれ140〜6,000ℓの容量が選べ、さらに雨水が足りない際には水道水を併用するタイプもあります。
どの範囲を雨水で賄うのかや、雨を集める屋根面積、タンク設置可能面積に応じて、適切なタンク容量を選ばなくてはいけません。
雨水処理システムを導入する“5つ”のメリット
雨水処理システムは、通常そのまま垂れ流ししてしまう雨水を有効活用する仕組みです。
では、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
節水になり水道代削減になる
雨の多い日本においては、その水を利用しない手はありません。
ここで、茨城県の年間降水量を見てみましょう。
気象庁の発表によると、1991~2020年の茨城県水戸市における年間平均降水量は「1367.7mm」です。(参考:気象庁|水戸・平年値)
これを屋根面積120㎡(30坪住宅)で受けて4本ある竪樋のうちの1本にタンクを接続すると想定すると、年間で「164,124ℓ÷4=41,031ℓ」もの雨水が貯まる計算になります。
1,000ℓ=1㎥に換算できるため、集めた雨水を全て水道水に置き換えると、なんと「5,000〜8,000円」程度に相当します。(参考:つくば市|上水道の料金)
つまり、雨水処理システムを導入すると、これだけの水道代が節約できる可能性があるということです。
災害時の非常水として活用できる
日本は世界でも有数の“災害大国”です。
例年、台風による被害がいくつも出ていますし、残念ながら地震の発生数も世界中でトップクラス。
そのため、日本の住宅には災害時の備えが欠かせません。
災害時にライフラインが絶たれた場合の設備として太陽光発電を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は雨水処理システムも大きな役割を果たします。
まだ記憶に新しい東日本大震災では、全国の総断水戸数が19 都道県・約257 万戸にまで上ったというデータがあり、そのうちのほぼ全ての世帯が復旧するまでには1ヶ月以上かかりました。(参考:国土交通省|東日本大震災における上水道被害と対応について)
つまり、地震時の生活水確保は大きな課題であるということです。
環境保護に貢献できる
雨水処理システムが一般住宅に普及すればするほど、環境保護に効果的とされています。
水道水削減は、水源確保のためのダム建設数を減らして森林を保護できるだけではなく、水源から家まで水を運ぶ際のCO2排出量も減らせるからです。
そして、地下水源の消費を最小限に抑えれば、地下水や河川などの水資源保護につながることも忘れてはいけません。
地球温暖化が進めば、確実に私たちの使う水道水にも影響を及ぼすでしょう。
日本は世界で見ると水資源が豊富である希少な国ですが、その資源も人口増加や自然破壊によって減少することは目に見えています。
そのため、政府は今後より一層「雨水利用」を普及すべく取り組んでいるのです。
(引用:国土交通省)
水不足でも安心して暮らせる
日本全体の年間降水量は約6,400億㎥とも言われており、そのうち30%以上は蒸発散するものの、残りの約4,100億㎥は水道水として活用できます。(参考:国土交通省|日本の水資源の現状・課題)
そのうち住宅用・工業用・産業用として使われる水は800億㎥程度なので、当面の間は深刻な水不足になることは考えにくいかもしれません。
しかし、日本でも平均地上気温は徐々に上昇しており、近年は少雨の年が増えているのも事実です。
そのため、水不足は必ずしも日本の住宅に関係ないとは言えません。
万が一に備えて雨水処理システムを導入しておくことは、安心できる暮らしを確保するためにも重要と言えるのではないでしょうか。
都市部の水害リスクを減らせる
本来、雨水は地表を伝いながら地中に吸収され、徐々に川へとたどり着きます。
しかし、都市部では地表のほとんどがアスファルトやコンクリートなどの舗装材で覆われているため、地中に雨水が浸透せずに短時間で河川へ流れ込み、増水して水位が急激に上がるようになってしまいました。
集中豪雨や異常気象による多雨が原因で、一気に川が氾濫して床下・床上浸水などの被害をもたらす事例も増えています。
このような都市の水害を「都市型洪水」や「都市型水害」と呼び、都市計画においては無視できない事案です。
計算上では、30坪の住宅が1万戸ほど雨水処理システムを導入した場合、年間約40万㎥程度の雨水を溜め込むことができ、これは茨城県・竜神ダムの有効貯水量270万㎥の約15%分に相当します。
つまり、雨水処理システムを導入する住宅が増えれば増えるほど、河川氾濫などの水害が減らせるということです。
雨水利用をする場合の注意点は?
雨水処理システムによって雨水を有効活用すると、経済面・環境面・防災面でメリットを得られますが、ご自宅に設置する前に知っておかなくてはいけない注意点もあります。
定期的なメンテナンスが必須
雨水タンクは密閉されているものの、長年そのままにすれば段々とゴミや苔が溜まってしまいます。
また、条件次第ではボウフラが大量発生してしまうかもしれません。
そのまま放置すれば、水質も安定せず匂いが気になりますし、加圧ポンプの故障も引き起こしてしまうでしょう。
そのため、定期的な掃除などのメンテナンスは必須です。
また、定期的にフィルターを交換することも推奨されています。
ですから、「一度設置すればそのまま放置できる」という訳にはいきません。
タンクの置き場所が必要
タンクを地上もしくは地中に設置するとなると、それなりの広さが必要になります。
容量が400ℓのタイプですと、タンクそのものとポンプなどの付属部材を合わせると、1〜1.5m角程度のスペースを確保しなくてはいけません。
つまり、ある程度家の外部スペースに余裕がなくては設置ができないということです。
ただし、庭の水やりに雨水を補助的に使うだけであれば、容量100〜200ℓ程度の小型タンクで十分かもしれませんので、狭小地の場合も施工会社へ相談してみましょう。
水の用途が限られる
いくらたくさん雨水を溜め込んだとしても、雨水を簡易的に消毒・制菌する程度なので、飲用水やその他風呂水など肌に触れる水としては利用できません。
災害時に限り生活水としてやむを得ず使うことも想定できますが、メーカーはこれを推奨しておらず、あくまでもトイレなどの活用をすすめています。
ですから、決して水道代がゼロ円になることはありません。
私たち“フォレストブレス”は、「呼吸が深くなる家」を目指し、自然素材にとことんこだわった家づくりに取り組んでいます。
雨水処理システムはもちろん、太陽光発電や薪ストーブなど、天然資源を活用できる設備もご提案しておりますので、“自然に寄り添った住宅”に興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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まとめ
雨水利用は光熱費削減という身近なメリットから、環境保護・都市災害抑制などの大きなメリットまでもたらします。
しかし、設置する前に知っておかなくてはいけない注意点があるのも事実です。
また、ライフスタイルや設置場所に合わせたタンク容量を選ぶ必要はあります。
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