国産材と外材の違いや価格推移について“木材のプロ”が解説
突然ですが、皆さんは、住まいを建てる際に木材の産地について考えますか?
日頃の生活ではあまり感じないかもしれませんが、実は日本は世界有数の“森林大国”。
国産の良質な木材が多く手に入りやすい環境にあります。
しかし、どうしても「国産材=高い」というイメージが強く、どんなメリットがあるのか知らない方も多いでしょう。
そこで今回は、「国産材」を使うメリット・デメリットや外材(輸入材)との違い、価格推移についてお話しします。
「長持ちする木造住宅を建てたい」「材料にこだわった自然素材の家を建てたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
●日本の木材自給率がは未だ半数以下であり、国産材利用がさらに進むためには、解決しなくてはいけない課題があります。
●私たち“フォレストブレス”が、1934年創業以来、製材所として培った知識と経験を活かし、自然素材にこだわった“あなただけの住まいづくり”をお手伝いします。
Contents
国産材を使うメリットは?
国産材とは、日本国内で成長し、伐採、加工された木材を指します。
さらに地域を限定した地産材という言葉も浸透し、各自治体で地場の木材利用を促しています。
では、なぜそもそも国産材への注目が高まっているのでしょうか?
それにはいくつかの理由があります。
メリット①「二酸化炭素問題の対策に繋がる」
木材の輸送エネルギーを評価する指標として用いられるのが、「ウッドマイレージ(ウッドマイルズ)」です。
輸送量と輸送距離を掛けて環境負荷を数値化したもので、木材輸入量の多い国々の中でも、日本は中国に次いで第2位の数値を出しています。
(引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム)
つまり、それだけ大きな環境負荷を与えてしまっているということです。
実際に、日本が多く輸入している北米産やヨーロッパ産の木材を国内まで輸送すると、多くの二酸化炭素を排出してしまいます。
(引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム)
一方、国産材は海を渡るような長距離の輸送が必要ないため、大幅なエネルギー削減につながります。
仮に、木造住宅で使われる全ての木材を国産材にした場合、一般的な国産材・輸入材の両方を使う住宅と比較すると、木材輸送時に排出される二酸化炭素量を約60%も削減できるという試算があるほどです。
(引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム)
メリット②「地方経済の発展」
かつては日本の一大産業であった林業や製材業ですが、近年は従事者の高齢化や人材不足が深刻で、政府が国産材利用を促しても、それがなかなか進まない原因となっています。
(引用:林野庁)
しかし、日本国土の約2/3は森林です。
現在も日本の森林資源、特に人工林の蓄積が毎年約1億㎥増加しており、その半数以上が木材として適齢な樹齢を迎えています。
そのため、それら資源を有効活用し、計画的に再植林することが重要とされています。(参考:林野庁|森林・林業・木材産業の現状と課題)
国産材の積極的利用は、地方経済の発展、ひいては国全体の経済発展にも繋がることが期待されているのです。
メリット③「SDGs実現に繋がる」
「森林を伐採すると環境に悪いのでは?」そう思う方も多いでしょう。
実は、そうとも言い切れません。
森は、植林→間伐→伐採→木材利用→植林と循環させることで、活性化するのです。
(引用:林野庁)
手入れされず放置された森林は衰退の一途をたどり、二酸化炭素の吸収はおろか、倒木や地滑りなどの自然災害まで引き起こしてしまいます。
逆に、定期的に収穫され整備された森林は、生き生きと木々が育ち、多くの酸素を放出し、二酸化炭素を固定するため、環境問題解決の要といっても過言ではありません。
また、建築材料として使われた木材は、その目的を果たして解体された後も、国内で古紙やペレットとして再利用することも可能です。
そのため、サスティナブル建材として高く評価されています。(参考:森林・林業学習館|木材は再生産可能な資源)
メリット④「日本の気候に順応できる材料」
日本は春夏秋冬で表情が異なり、夏は高温多湿、冬は低温乾燥する気候特性です。
木は、材木へ加工されても、空気中の湿気を吸収・放出するため、生育環境と近い場所で使う方が、より順応するとされています。
そのため、高温多湿・低温乾燥を繰り返す環境で育っていない輸入材は、温度や湿度の変化に適応できず、変形や木割れを起こす可能性は否めません。
「日本で建てるなら国産材で」というのは、とても理にかなっていますよね。
メリット⑤「日本で多く生息する木は耐朽性・耐蟻性が高い」
日本の人工林に多く生息しているのが、スギ・ヒノキ。
森林面積2,505万ヘクタールのうち、704万ヘクタール(28%)を占めます。
(引用:林野庁)
スギ・ヒノキは耐久性・耐蟻性が高いことで知られています。
スギに含まれるフィトンチッドや、ヒノキに含まれるテルペンやと呼ばれる物質は、バクテリアやカビ、害虫を寄せ付けない作用があるためです。
腐朽菌の繁殖を抑えられるだけではなく、シロアリの嫌がる匂いを放つため、防蟻剤の効果が薄れても被害を受けるリスクを抑えられます。(参考:一般社団法人 国産材を使った木造住宅を守る会)
一方、輸入材には輸送時の劣化を防ぐために、多量の防虫剤や防腐剤を注入しているものがほとんどです。
メリット⑥「世界情勢の影響を受けにくい」
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、2021年に世界で問題となったのが「第三次ウッドショック」です。
輸送の停滞や、アメリカでの住宅需要急増などの影響を受け、世界的に木材不足・木材価格高騰が起こりました。
その影響を最も受けたのが住宅業界です。
当初予定していた材料費を大きくオーバーし、倒産に追い込まれた工務店も少なくありません。
その状況に拍車をかけたのが、ロシア・ウクライナ侵攻による原油高や、歴史的な円安ドル高です。
一時は、輸入材の価格が2021年以前の3倍近くにまで上昇してしまいました。(参考:林野庁|モクレポNo.18)
輸入材への依存を止めてできるだけ国産材を使用することで、世界の価格変動に左右されず、高品質の材料を安定して入手することができます。
日本の木材自給率はどのくらい?
林野庁の発表によると、2021年の木材自給率は41.1%、建築用材に限ると48.0%です。
これは1970年頃と同様の数値で、一時は18.8%まで落ち込んだ木材自給率が大きく回復していることを意味します。
(引用:林野庁)
しかし、逆を返せばまだ半数以上もの木材を輸入材に頼っているということです。
農林水産省が2009年に発表した「森林・林業再生プラン」では、「10年後の木材自給率50%」という目標を掲げましたが、それも未達に終わっています。
しかし、長い時を経て築き上げた人工林という貴重な資源を後世に残すために、また、木材の安定供給、林業・製材業の発展、地方経済の活性化、低炭素社会の実現などの目的を果たすために、国産材利用は重要な課題として取り組まれているのです。
国産材のデメリットは?「使われていない」って本当?
国産材について調べてみると、「使われていない」というキーワードが目につきます。
実際に、大手ハウスメーカーなどでは国産材利用がそれほど進んでおらず、自給率上昇が停滞している原因の内の一つとされています。
林野庁の行ったアンケートによると、住宅メーカーが国産材を使わない理由は「価格」や「流通量」に関する懸念点を持つ会社が多いことが分かりました。
(引用:林野庁)
では、実際はどうなのでしょうか?
それぞれ詳しく見てみましょう。
デメリット①「価格が高いというイメージが強い」
ひと昔前までは、海外で大量に加工された木材は国産材と比べて大幅に安かったため、今でも「国産材は高い」「輸入材(外材)は安い」というイメージを持つ方は少なくありません。
これこそ、国産材利用の促進を妨げている原因と言えるでしょう。
しかし、先ほどもお話しした通り、ウッドショックによって輸入材の価格が急騰しました。
一時的に需要が国産材へ移行したことで国産材価格も上昇しましたが、輸入材ほどではありません。
なぜなら、スギ材やヒノキ材は林野庁の元で流通量をコントロールし、価格の上がり下がりをある程度抑える取り組みがなされているからです。
この現状によって、輸入材と国産材の価格差は小さくなっており、それに加えて価格変動リスクの少ない国産材への注目が高まっています。
デメリット②「流通量がまだまだ少ない」
必要な量を確実に入手できるかどうかを不安に感じ、大手ハウスメーカーは国産材利用へ切り替えることを躊躇っている傾向があります。
これこそ日本の林業・製材業が抱える大きな課題です。
森林資源はあるものの、それを伐採・加工する人員が足りないのが現状。
そこで、林野庁は間伐材利用の促進など、林業・製材業の生産性を上げて従事者を増やす取り組みをしています。(参考:林野庁|生産性の高い林業の確立に向けて)
デメリット③「高温多湿の環境下で乾燥に時間がかかる」
木は、伐採したばかりですと含水率が100〜200%と、水分をたっぷり蓄えています。
木材に加工する場合、この状態のままでは品質安定性や強度が低いため、含水率15ー20%程度にまで乾燥させなくてはいけません。
ところが、湿度の高い日本では、適切な水分量になるまで時間がかかってしまいます。
機械で高音により急激に乾燥させる方法もありますが、艶が落ちるなど品質に問題が出てしまうケースも少なくありません。
また、日本の林業は一本の木を一本の木材に加工するような小径木が主流であり、自然乾燥して適切な含水率にするためには、半年から1年の期間が必要です。
そのため、現時点では、全ての新築住宅に使う木材を賄うことは現実的ではありません。
〈関連コラム〉
木材の含水率で住宅の強度が変わる?基礎知識から関連性まで解説
デメリット④「高い製材技術が必要」
北米や南米のように国土が豊富な国々とは異なり、日本の林業は主に丘陵地で営まれています。
そのため、そこで育った樹木は日当たりによって曲がって育つ可能性もあるのです。
当然のことながら、真っ直ぐの木を加工するよりも高い技術が必要となり、手間がかかる点は否めません。
ただし、近年は真っ直ぐ育ちやすいエリートツリー種の植林が進んでいるため、今後はより製材業の生産性が上がることが期待されています。
デメリット⑤「樹種が限られる」
日本には四季があり、地域によって気候風土は異なるものの、全国を見ても生息している樹種はそれほど多くありません。
そのため、どうしても建築材料として使える材料も限られてきてしまうのです。
特に内装材を選ぶ際に、それが懸念点となるケースも少なからずあるでしょう。
我が国の森林面積のうち約4割に相当する1,020万haは人工林で、終戦直後や高度経済成長期に伐採跡地に造林されたものが多くを占めており、その半数が一般的な主伐期である50年生を超え、本格的な利用期を迎えている。
人工林の主要樹種の面積構成比は、スギが44%、ヒノキが25%、カラマツが10%、マツ類(アカマツ、クロマツ、リュウキュウマツ)が8%、トドマツが8%、広葉樹が3%となっている。
(引用:林野庁)
意匠材として木材を使う場合、どうしても木目や色味の選択肢が少なく、輸入材に頼らざるを得ないのです。
ただし、近年は広葉樹(ナラ・タモ・セン・クリなど)の植林も進んでおり、材料の選択肢が増えてきています。
デメリット⑥「品質の認定制度が整っていない」
大手ハウスメーカーが国産材利用に踏み切れない理由はまだあります。
それは、JAS認証など公的な品質保証を受けている材料が全てではないからです。
寸法安定性に優れた人工乾燥材や集成材、品質・性能が明確な製品へのニーズが高まっているが、これらに対応した国産材製品の供給は道半ば。
JAS認証に関しては、認証等に関する費用の高さ等が障壁という声が聞こえるところ。
ハウスメーカー等が供給する木造軸組住宅において、国産材の利用が進展している様子がうかがえるが、横架材は輸入集成材が大半を占めており、国産材の使用割合は1割に留まっている。
(引用:林野庁)
日本産木材は、世界でも高品質と認識されているものの、公的機関からの“お墨付き”がないため、どうしても採用しづらいというのが現状です。
また、製材業者からすると、費用をかけてJAS認証を受けても、それほど販売価格に影響しないという側面も問題視されています。
国産材利用は、環境面・経済面・品質面でメリットがあるものの、やはりその価格が障壁となって採用できないケースもあるでしょう。
では、実際に国産材と外材(輸入材)とでは、どれほど価格差があるのでしょうか?
まず、日本国内の製材価格について見てみましょう。
(「林野庁|モクレポNo.18」のデータを基に作成)
2021年夏頃に価格が高騰した原因は、ウッドショックによって輸入材から国産材へ需要が一斉に移行したことが考えられます。
しかし、それ以外はスギ材が60,000円前後、ヒノキ材は80,000〜90,000円の間で比較的安定した価格を保っていることが分かるでしょう。
では、輸入材価格はどのように変化しているのでしょうか。
こちらは様々な樹種の平均価格を表したグラフです。
(引用:林野庁|モクレポNo.18)
産地によっても価格変動の幅はまちまちですが、総じて見ると、最高で120,000円近くまで値上がりしていることがお分かりいただけるでしょう。
一時的ではありますが、平常時の価格が40,000円程度なのに対して、3倍近くまで高騰していることを意味します。
これには、ウッドショックはもちろん、運輸にかかる原油の値上がり、円安ドル高による為替の影響など、いくつかの原因が重なり合っています。
つまり、今後も世界で大きな情勢変化があれば、輸入材の価格に大きな影響を与える可能性が大いにあるということ。
国産材と輸入材の価格差をどう捉えるかは人それぞれですが、国産材利用のメリットを鑑みても、決して損ではありません。
〈おすすめコラム〉
自然素材の家でこだわりの注文住宅を|メリット・デメリットや実例を紹介
“フォレストブレス”は、1934年に製材所として創業して以来、長年培った経験と知識を踏まえ、高品質な木材を用いた住宅を数多く手掛けてきました。
特に、木材へはとことんこだわり、自然乾燥または低中温式の樹種が豊富な国産材を厳選。
産地を限定せずに、施工部位に合わせて適した樹種を選び、良質な木材をお手頃な価格でお客様にご提供できるのが、私たちの強みです。
まとめ
日本が世界に誇れる“森林資源”。
しかし、残念ながらまだまだその魅力が一般の方へ認知されておらず、木材自給率も半数を下回っています。
国産材を住宅に取り入れることで、環境面・経済面・品質面でメリットが得られるため、ぜひマイホーム建設をご検討中の方は、木材の産地にもこだわってみてください。
私たち“フォレストブレス”は、1934年に製材所として創業して以来培った知識と経験を活かして、快適で健康的な暮らしが実現できる住まいをご提案しております。
「小さな家でコトを愉しむくらし」をコンセプトに、自然素材にこだわった事例を数多く手掛けていますので、ぜひ私たちの“暮らしの提案”をご覧ください。
「国産材を使った家・自然素材の家」を建てるなら茨城県石岡市のフォレストブレスへ
フォレストブレスでは国産無垢材や漆喰、シラス壁などを活かした自然素材の家づくりを行っています。
断熱材にはセルロースファイバーや羊毛断熱、接着剤には膠や米糊など採用に、目に見えない部分の素材選びにもこだわり抜いています。
自然素材の家に興味がある方、身体に良い家を建てたい方のご相談をお待ちしております。