〈薪ストーブのある家を後悔しない〉メリット・デメリットから注意点、トラブル事例まで解説
最近、北国以外でもご自宅へ薪ストーブを設置する事例が増えています。
しかし、憧れだけで導入して後悔してしまう方も少なくありません。
また、初めて薪ストーブを使う方の中には、うまく使いこなせるか不安な方も多いでしょう。
そこで、薪ストーブのメリット・デメリットから選び方のポイント、注意点について詳しく解説します。
同じく人気のペレットストーブとの違いも紹介しますので、マイホームの新築やご自宅のリノベーションを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
● 薪ストーブにはメリットがある一方、事前に知っておくべきデメリットや注意点もあります。
● 使い方によって適した薪ストーブは異なります。
● 私たち“フォレストブレス”では、1934年創業以来木材会社として培った経験を活かし、自然素材にこだわった“あなただけの住まいづくり”をお手伝いしています。
Contents
薪ストーブのメリット
薪ストーブとは、鋳鉄や鋼板で作られており、炉内で薪を燃やして周囲を温める暖房設備です。
同じく薪を燃料とした暖炉と混同されることもありますが、薪ストーブは扉が付いており給気口があるため、酸素量の微調整ができて火の大きさをコントロールしやすい点が特徴です。
そのため、過燃焼を防ぎ、薪が長持ちし、周囲が熱くなりすぎません。
では、他の暖房器具と比べて優れている点を見てみましょう。
遠赤外線による柔らかい暖かさ
薪ストーブからの輻射熱は、まるで陽の光のような柔らかい暖かさがあります。
その理由は、薪ストーブから放たれる遠赤外線は波長が大きく、皮膚の奥まで届きやすいからです。
そのため、ガスストーブのようにピリピリするような熱さを感じることはほとんどありませんし、体のストーブに近い側面だけ熱く、反対側は寒いということもありません。
じんわりゆっくり心地よく体を温めてくれます。
炎による癒し効果
「炎のゆらゆらと揺れる様子はいつまでも眺められる」という方も多いでしょう。
これには科学的な理由があります。
炎の揺らぎは「1/fゆらぎ」と呼ばれ、規則的なリズムとたまに起こる突発的なリズムが絶妙に合わさった動きです。
潮の満ち引きや葉っぱが風になびく様子が当てはまります。
人が1/fゆらぎを眺めると、人の心を落ち着かせ、入眠効果やリラックス効果を得られるとされています。
非日常的な調理も楽しめる
ストーブの上でお湯を沸かしたりスープを作るなどの手軽な調理はもちろんのこと、オーブン庫を備えているストーブではパンを焼くなど本格的な調理も楽しめます。
そのため、一味違う料理を楽しみたい方にも薪ストーブはおすすめです。
防災設備としても役立つ
薪ストーブがあれば、電気やガスが止まった時にも、暖を取り、その上簡単な調理もできます。
また、夜間には炎が部屋をほんのり照らしてくれるため、災害時にも便利です。
洗濯物がすぐ乾く
薪ストーブを炊いていると、室内干しした洗濯物がすぐ乾きます。
洗濯物を干すと室内の過乾燥も軽減できるため、一石二鳥と言えるでしょう。
環境にやさしくサスティナブル
薪は自然燃料、いわゆるバイオマス燃料です。
端材を燃料にすることもできますし、薪を消費すれば森林の循環を促進させ、多くの二酸化炭素を固定することにつながります。
「薪を燃やすと二酸化炭素を多く排出するのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、火力発電や天然ガス運搬に伴う二酸化炭素排出量に比べると、その量は格段に少ないと言われています。
国土の2/3を森林が占める日本においては、薪となる木々が全国で育っているため、それを活用できる薪ストーブは、環境的観点からも近年再注目されているアイテムです。
薪ストーブのデメリット・注意点やトラブル事例
薪ストーブには快適な暮らしを実現する上でいくつものメリットがある反面、導入する前に知っておかなくてはいけないデメリットや注意点もあります。
家全体が暖まるまで時間がかかる
薪ストーブは、燃焼室内の薪が十分高熱になり、その熱がストーブ本体や煙突に伝わって、そこから輻射熱として周囲を暖めはじめます。
そのため、ストーブやエアコンと比べると、室内全体が温まるまで時間がかかってしまいます。
足元から効率よく暖めたい方は、床暖房と併用するのもおすすめです。
薪の確保が難しい地域もある
雪国など、多くのご家庭で薪ストーブが設置されている地域はスーパーマーケットやガソリンスタンド、コンビニなどでも簡単に薪が手に入ります。
ところが、それ以外の地域では、良質な薪を入手するのが難しいかもしれません。
お庭の木を剪定して薪として使うとしても、半年から一年ほどじっくり乾燥させる必要があるため、寒い時期分の薪を確保するのは大変です。
そのため、薪ストーブを検討する際には、合わせて薪の入手方法も確認してください。
煙突掃除などの定期的なメンテナンスが必要
薪ストーブを頻繁に使う場合には、燃焼室内はもちろん煙突内の煤を定期的に取り除かなくてはいけません。
長期間掃除しないと、煙突内部に溜まった煤やタールへ引火して、煙道火災を引き起こす恐れもあります。
煙突掃除は途中へ掃除口を設置すれば屋根に登らず作業できますので、建築会社とメンテナンスも考慮してプランを検討してください。
設置場所は防火性・耐火性の高い内装にしなくてはいけない
薪ストーブは、建築基準法・消防法上で、「かまど、こんろなど」と同じ扱いとなります。
そのため、内装制限や換気設備の設置義務があるため、その点を必ず建築会社へ確認してください。
主な関連法規は以下の通りです。
かまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。
薪ストーブを設置する部屋の内装材に制限があり、正しく換気されるための設備を取り付けることが定められています。
建築基準法(建築基準法施行令)以外にも、消防法における火災予防条例では、ストーブの材質や設置場所、周囲の仕上げ、煙突の計画に関する規定があり、自治体ごとに内容が異なるため、事前確認は欠かせません。(参考:茨城県石岡市火災予防条例)
煙によってご近所トラブルになることがある
最近は住宅密集地でも薪ストーブを設置する事例が増えていますが、それに伴い、煙によってご近所トラブルへ発展するケースも見られます。
例えば、煙突の吹き出し口近くにお隣の窓やベランダがあると、どうしても煙で迷惑をかけてしまいますよね。
そのため、薪ストーブを設置する場合は、前もって近隣の方へ相談・挨拶をしておくと良いでしょう。
薪ストーブの種類や選び方のポイントは?
薪ストーブにはたくさんの種類があります。
それぞれ特徴が異なりますので、使い方やお好みに合わせて適したものを選んでください。
主な分類は以下の通りです。
- ・国産と海外製
- ・放熱方式
- ・燃焼方式
- ・材質
- ・サイズ
国産と海外製
国産のストーブは、鋼板製の小型タイプが中心です。
工房で手作りされるものも多いため、
個性的なデザインのストーブをお探しの方におすすめです。
海外製ストーブは、北欧・北米産が多いですが、最近では台湾製やオーストラリア製など、レパートリーは年々増えています。
そのため、たくさんのデザインから選びたい方や、オーブン付きなどオプション機能が充実しているストーブが欲しい方は、海外製のストーブから選び始めるのがおすすめです。
放熱方式
薪ストーブの放熱方式は、「輻射式」と「対流式」に分けられます。
輻射式は、薪が燃焼した熱でストーブ本体が熱くなり、そこからの方遮熱で空間を温めます。
そのため、ストーブ本体が熱くなり、壁やその他可燃物から距離を空けなくてはいけません。
一方、対流式は、燃焼熱を周囲に直接放熱せず、二重構造の間にある空気を温めて対流を起こし、それを部屋に広げるイメージです。
放熱式よりもストーブ本体が高温になりにくい点はメリットですが、一方で温まるまで時間がかかります。
設置面積が広く確保できる場合や小さいお子さん・ペットがストーブに近づかないようにできる場合は「放熱式」、設置場所が狭い場合は「対流式」がおすすめです。
燃焼方式
薪ストーブの燃焼方式は、主に「触媒方式」と「非触媒方式」に分けられます。
触媒方式は、キャタリティックコンバスターと呼ばれるフィルターへ燃焼ガスを通して、一次燃焼の際に燃え残った不純物を取り除き、二次燃焼する仕組みです。
一方、非触媒方式は、二次空気、三次空気を取り入れることで燃焼の効率を高め、さらに排気ガスをきれいにするタイプで、クリーンバーン燃焼・リーンバーン燃焼・ファイヤードーム燃焼・フレックスバーン燃焼と種類が豊富です。
燃焼方式によって、温められる部屋の広さや薪の消費量が異なりますので、設置場所や使い方を明確にして、建築会社へ相談しましょう。
材質
薪ストーブは、鋳物製と鋼板製があります。
鋳物製は温まるまで時間がかかりますが、一度温まると長時間それをキープできます。
一方、鋼板製は鋳物製よりも早く温まる一方、薪を絶やせばすぐに冷えてしまいます。
どちらが良い悪いという訳ではありませんので、設置する部屋の広さや使い方に合わせて適したものを選びましょう。
サイズ
薪ストーブはメーカーや機能によってサイズが様々です。
広い部屋には大型タイプがおすすめですが、大きければいいという訳ではありません。
コンパクトな部屋に大型ストーブを置いて少量の薪を焚べ続けると、煤やタールが詰まりやすくなる恐れがあります。
また、近年の高気密高断熱住宅では、リビングや吹き抜けのあるような大きな部屋でも大型ストーブは必要ない場合がほとんどです。
そのため、まずは中型タイプ(8,000~10,000kcal)からストーブを選び始めましょう。
リビングなど一部の部屋のみ暖める場合や他の暖房器具と併用する場合には、小型タイプ(5,000~6,000kcal)程度で十分かもしれません。
ただし、小型タイプを選ぶ際は市販されている薪(長さ40cm程度)が燃焼室に入るか確認してください。
薪ストーブの設置費用とメンテナンス費用はどのくらい?
薪ストーブの設置にかかる費用は、本体価格・煙突パーツ価格・設置費用です。
維持するためには定期メンテナンスのコストも想定しておかなくてはいけません。
ストーブ本体価格「10〜150万円程度」
煙突パーツ価格「40〜80万円程度」
設置工事費「20〜40万円程度」
=トータル「70〜270万円」
(足場工事や付帯内装工事は別途)
ストーブ本体の清掃費用「2〜3万円程度」
煙突の清掃費用「2〜5万円程度」
これらを2〜3年周期で行う
=年間維持費「1.5〜2.7万円程度」
(足場工事は別途、煙突形状によっては割増料金がかかる場合も)
使用時間を朝3時間・夜5時間、年間4ヶ月程度使ったと仮定すると、
年間の薪消費量:「1.2〜1.5t程度」
薪の価格目安:「40〜120円/kg」=「40,000〜120,000円/t」
=年間にかかる薪代「48,000〜180,000円程度」
一見、かなりコストがかかるように感じるかもしれませんが、正しく設置して定期メンテナンスを行えば、薪ストーブは20〜30年使い続けられます。
また、お庭の木を乾燥させて溜めておいたり、森林組合などへ薪を買いに行けば、維持コストは安くできます。
一方、エアコンなどの空調機器は10〜15年程度で取り替えなくてはいけませんし、電気代は年々上がっていますよね。
そのため、長い目で見れば薪ストーブの方がエアコンなどよりも空調コストを抑えられる可能性もあるのです。
薪ストーブ・ペレットストーブのどちらがいい?
薪ストーブと同じくバイオマス燃料を使う暖房器具として、ペレットストーブを思い浮かべる方も多いでしょう。
どちらもあまり違いがないように感じるかもしれませんが、特徴はそれぞれ異なります。
薪ストーブ |
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ペレットストーブ |
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まとめると、設置条件は薪ストーブの方が厳しく、ペレットストーブの方が制限は少ない一方、稼働に電気が必要です。
燃料費にも違いがあるため、一日中使い続けたい場合には、ペレットストーブも視野に入れて検討しましょう。
逆に、たまにリラックスする時間のみ使う場合は、炎を眺められる薪ストーブがおすすめです。
使い方に合わせて、適したストーブを選んでください。
まとめ
薪ストーブを採用する家が増えている一方で、特徴や使い方、メンテナンス方法を知らずに導入して後悔してしまう方は少なくありません。
一瞬で入り切りできるエアコンなどとは使い勝手がかなり異なりますので、事前にメリット・デメリットや注意点を知っておくことが重要です。
私たち“フォレストブレス”は、1934年に製材所として創業して以来培った知識と経験を活かして、自然素材にとことんこだわった家づくりを行っています。
“小さな家でコトを愉しむくらし”をコンセプトに、薪ストーブを取り入れた事例もございますので、「薪ストーブを設置するか迷っている」という方は、お気軽にご相談ください。
「自然素材の家」の新築・リノベーションは茨城県石岡市のフォレストブレスへ
フォレストブレスは、「自然素材」と「あつらえ設計」にこだわった高品質な住宅を数多く手掛けています。
“本当に快適な家に住んでほしい”という想いから、家づくりに以下のものを使わないことをお約束します。
- ・化学物質を含む接着剤を使用した合板、集成材
- ・防蟻防腐剤注入土台・グラスウール
- ・ビニールクロス・廃棄時有害なもの
お客様の住まい方や個性、価値観に寄り添い、“あなただけの住まい”をご提案します。
「呼吸が深くなる家」それこそ私たちが追求する快適なマイホーム。
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