〈無垢杉材を使った住宅〉メリット・デメリットや材料選びのポイントを解説
天然の杉材を住宅に取り入れる事例が増えています。
日本では古くから使われてきた杉材ですが、その魅力が再び見直されてきているのです。
しかし、一体どこが良いのか知らない方も多いでしょう。
そこで、「無垢杉材」を住宅に取り入れるメリット・デメリットや材料選びのポイント、その他メンテナンス方法や経年変化など、気になる疑問にお答えします。
● 無垢杉材には、機能面、健康面や環境面においてメリットがいくつもあります。
● 無垢杉材は、フローリングのほかに、天井・壁や内装ドア、収納だけではなく、構造体や下地材にもご採用いただけます。
● 私たち“フォレストブレス”では、1934年創業以来木材会社として培った経験を活かし、自然素材にこだわった“あなただけの住まいづくり”をお手伝いしています。
Contents
無垢杉材の特徴とメリットは?
杉材は、世界でJapanese Cederとも呼ばれる“日本固有”の樹種です。
奈良県の吉野杉や新潟県の越後杉など、ブランド化している樹種も多く、国内はもちろん海外でも良質な木材として人気です。
実は、日本国内における人工林のうち、杉が占める割合は44%、およそ半数にも上り、その面積は444万ha、北海道の半分以上になります。
(引用:林野庁|スギ・ヒノキ林に関するデータ)
国産の杉板は主に建築資材として加工され、住宅だけではなく最近は教育施設や医療福祉施設、商業施設にも採用されます。
では、無垢杉材の持つメリットを詳しく見てみましょう。
調湿性が高い
無垢杉材には、細かい空隙が無数にあり、湿潤環境の中ではそこに空気中の水分を抱えることができます。
逆に、空気が乾燥すると溜めていた水分を放出できるため、まさに天然の“除湿加湿器”と言えるでしょう。
無垢材をふんだんに取り入れた空間においては、相対湿度を60〜70%程度に保つことができるという実験結果もあるほどです。(参考:兵庫県立農林水産技術総合センター森林林業技術センター)
労働安全衛生法における衛生基準では、人が過ごすのに適した環境は「相対湿度40%以上70%以下」と定めていることからも、高い調湿機能を持つ無垢杉材をインテリアに取り入れることで、快適な室内環境を維持できることは明白です。
断熱性が高い
杉の細胞内にある空隙は、調湿効果だけではなく断熱効果も生み出します。
ここで、天然木材とその他建築材料の“熱伝導率(熱の伝えやすさ)”を比較してみましょう。
(建築材料) | (熱伝導率 W/mK) |
コンクリート | 1.6 |
ステンレンス | 15 |
ガラス | 1 |
石膏ボード | 0.22 |
無垢材(杉) | 0.12 |
無垢材(ナラ) | 0.19 |
空気 | 0.0241 |
空隙の多い杉材は、そこに満たされている空気によって、高い断熱性があることが分かります。
そのため、住宅の床・壁・天井材に用いると、高い断熱性・保温性・保冷性を得られるのです。
特に、無垢杉材から作られたフローリング材を住宅の1階床に採用すると、下からの底冷えを大幅に軽減できます。
夏場には、素足で歩くとひんやりとした涼しさを感じられる点も人気のポイントです。
衝撃吸収性・吸音性が高い
無垢杉材は、ものによって空隙率(隙間のある割合)が70%以上もあるため、適度な硬さで歩行時の体に伝わる衝撃も吸収します。
足腰への負担が軽減でき疲れにくくなるだけではなく、高齢者の大腿骨骨折防止や、子供の転倒によるケガの軽減などの効果もあるため、高齢者福祉施設や医療施設、教育施設への採用事例は少なくありません。(参考:林野庁|内装木質化した建物事例とその効果)
最近は無垢杉材にクッション材を合わせたさらに高い衝撃吸収性・吸音性のあるフローリング材の開発も進んでいます。(参考:奈良県|奈良県産スギ・ヒノキ材を用いた衝撃吸収フローリングの開発)
光の反射を和らげる
無塗装の無垢材は、太陽から放たれる紫外線を吸収し、反射光を大幅に減らせるため、目への負担を抑えられます。
特に、杉材はその効果が高く、紫外線だけではなく暑さの原因にもなる赤外線の反射率も低いため、日差しによる室温上昇も軽減できるのです。
香りによるリラックス効果・消臭効果
杉には、“木の香り成分”であるフィトンチッドが多く含まれています。
このフィトンチッドの持つ主な効力は以下の3つです。
- ・細菌やウィルスを寄せ付けない“殺菌・抗ウイルス効果”
- ・シロアリを寄せ付けない“防虫効果”
- ・血圧低下や脳活動の沈静化をもたらす“リラックス効果”
(参考:国立研究開発法人 森林研究・整備機構|森の香りを科学する)
また、吉野杉の産地でも知られる奈良県の調査によると、消臭効果があることも分かっています。
施工しやすい・加工しやすい
杉は木材の中でも軽く柔らかいため、加工しやすく施工時の効率が高い点もメリットです。
現場で細工しやすいことも、内装仕上げ材に多く活用される所以と言えます。
「柔らかいということは耐久性が低いということ?」と疑問が湧く方も多いでしょう。
この場合の“柔らかさ”は、あくまでも他の樹種と比べた相対的なものであり、建築材料としては十分な耐久性があります。
実際に、内装仕上げ材だけではなく、木造住宅の柱・梁・土台など、主要構造部へも無垢杉材は使われています。
品質と流通量が安定している
住宅業界を大きく揺るがした2021年のウッドショックは、まだ記憶に新しいでしょう。
世界的に木材の価格が高騰し、入手が困難になったため、建築会社だけではなくエンドユーザーへも大きな影響を及ぼしました。
ウッドショックの影響を特に大きく受けたのが、海外からの“輸入材”です。
原油高や円安の状況も相まって、以前高い価格が続いています。
一方、杉材をはじめとした国産材は、比較的世界情勢の影響を受けにくいとされています。
運輸が国内に限り距離が短い上に、日本の歴史ある林業によって生育されているため、高品質の木材を安定的に入手しやすいのです。
〈おすすめコラム〉
国産木材で住宅を建てるメリット・デメリット|国産材は本当に価格が高い?
省エネで環境に優しい
国産材である杉材、特に無垢材を使うと、運搬時・加工時のエネルギーや二酸化炭素排出量を大幅に削減できます。
(引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム)
そのため、林野庁も国産材利用促進を行っており、その成果から日本の木材自給率は低迷時よりかなり回復しています。
フォレストブレスは、1934年に木材会社「渡辺木材」として創業して以来、長い間、国産材と向き合ってきました。
国産杉だけではなく、ヒノキ・カラ松・サワラなど、樹種や産地にこだわらず、それぞれの特徴や性質を最大限活かせる適材適所を見極めて、家づくりに活かしています。
無垢杉材にデメリットはある?
無垢杉材には、様々な側面のメリットがある一方、天然素材ならではの欠点もあります。
知らずにご自宅へ採用すると後悔してしまうかもしれませんので、事前にデメリットへも目を向けておきましょう。
無垢杉材のデメリットは主に2点あります。
温度や湿度の変化によって伸縮しやすい
空隙率の高い杉材は、温度や湿度環境の影響を受けやすいというデメリットがあります。
極端に湿潤と乾燥を繰り返すと、伸縮に伴ってソリや歪み、ねじれが発生することも少なくありません。
ただし、じっくり乾燥された杉材ですとそのリスクをいくらか抑制できます。
また、木の特性を知り尽くし、材料に合わせた施工ができる建築会社へ相談することも重要なポイントです。
キズや凹みがつきやすい
柔らかい杉材は、すぐにキズや凹みがついてしまいます。
そのため、それらが気になってしまう方は、杉材の採用をじっくり検討した方が良いでしょう。
逆に、キズや凹みもその住まいの“歴史・思い出”と捉えられる方は、愛着が湧いてくるはずです。
どうしても目立つキズや凹みがついた場合は、浅いものであれば研磨で補修できるかもしれませんので、建築会社へ相談してみてください。
フローリング・壁・天井・ドアなどに無垢杉材を取り入れるのがおすすめ
杉材は、建物の様々な場所へ用いられます。
特に内装仕上げ材に使われることが多いため、杉フローリング材をイメージする方も多いでしょう。
無垢杉材のメリットを最大限に活かしたい方は、ぜひ下記へ杉材の採用をご検討ください。
- ・フローリング
- ・板張り天井材
- ・板張り壁材
- ・造作建具(内装ドア・収納ドア)
- ・造作収納や造作家具
- ・造作階段
- ・木製格子
とことん木材にこだわりたい方には、構造体や外壁へ杉材を用いるプランもおすすめです。
〈おすすめコラム〉
外壁が板張りの家|木材の種類、メリット・デメリット、費用など解説
“梁あらわし”天井のメリット・デメリットとは?気になる疑問を一挙解説
フォレストブレスでは、内装仕上げやドア、造作収納だけではなく、下地材や柱、土台、梁などの構造体にまで天然杉材を使っています。
材料選びのポイントや注意点は?
無垢杉材を内装仕上げ材に取り入れる際には、いくつか注意しなくてはいけない点があります。
空間の用途などに合わせて、他の材料と組み合わせることも検討してください。
床暖房を設置する場合は要注意
杉材は断熱性が高いため、床材の厚さによっては床暖房の熱が伝わるまで通常よりも時間がかかる可能性があります。
また、床暖房に対応していないフローリング材を選ぶと、すぐに熱で反って床鳴りが発生してしまうでしょう。
そのため、床暖房を設置する箇所は、必ず床暖房対応タイプのフローリング材を採用してください。
水ハネする場所への採用には要注意
洗面所やキッチンの床や壁など、水ハネする可能性がある場所へ無垢杉材を採用したい場合は要注意です。
なぜなら、無塗装の材料は、水染みがつきやすいからです。
また、板材の継ぎ目から大量に水が流れ込むと、膨張して割れや変形を引き起こしかねません。
そのため、水回りへはタイル材など水に強い仕上げ材を採用することも検討しましょう。
節(ふし)の有無でイメージが変わるので要注意
杉材は、白褐色で焦茶色の節が目立ちやすい樹種です。
内装材においては、節の有無で強度にそれほど影響ありませんが、仕上がりのイメージはかなり異なります。
また、節が多いほど伸縮しやすく、少ないほど高価です。
そのため、ご予算や空間用途、好みに合わせて材料を指定しましょう。
「節なし(無節)」 | 最も高価で、白木を生かした和風デザインにおすすめ |
「上小節(じょうこぶし)」 | 直径10mm程度までの小さな節が少量点在し、洋風・和風共にすっきりとした品のあるインテリアにおすすめ |
「小節(こぶし)」 | 直径20mm程度までの節が点在し、ナチュラルで素朴な印象にしたい方におすすめ |
「節あり」 | 大きめの節も点在するため最も安価で、収納内部などの見えない部分の仕上げ材に使われる |
板材の幅によってイメージが変わるので要注意
フローリングや天井材、壁材に用いられる材料には、幅のレパートリーがあります。
80mm・120mm・150mm・300mmなどが一般的ですが、それぞれ仕上がりのイメージが異なりますので、注意しましょう。
幅の広い材料ほど目地が少なく優雅で高級感が増します。
ただし、コンパクトな空間に施工すると、見た目のバランスが悪く、材料ロスが多くなってしまうため、材料選びの際には建築会社にアドバイスをもらいましょう。
無垢の杉材に関するQ&A|価格・メンテナンス・耐久性と経年変化・ヒノキとの違い
初めてマイホームを新築する方やリノベーションする方の中には、「無垢杉材を採用したいが色々気になる」という方も多いでしょう。
そこで、多くの方が気になる疑問へ“木材のプロ”がお答えします。
Q.「無垢の杉材は値段が高い?」
ブランド化している吉野杉などの銘木や、天然林で育った屋久杉などは、希少価値が高く生育過程で人件費がかかるため、どうしても高価です。
木材の値段は、樹種や部位、木目の美しさ、節の数など、グレードによって細かく価格設定されるため、品質が良くてもご予算に合う材料を見つけることは決して難しくありません。
ただし、品質と価格のバランスが良い木材を選ぶためには、“目利き力”が欠かせないため、確かな実績のある建築会社を選ぶことが重要です。
最近は地元産(地域産)の木材を使うことで補助金が支給される自治体もあるため、合わせてチェックしましょう。(参考:茨城県|いばらき木づかいチャレンジ(木材住宅支援)事業)
Q.「無垢の杉材はどうやってお手入れする?メンテナンス方法は?」
無塗装の杉材は、基本的に水拭きできません。
日常的なお掃除は、乾拭きや硬く絞った布巾で軽く拭き取る程度にしましょう。
どうしても取れないしつこい汚れには、薄めた洗剤を使うこともできますが、シミになるリスクがあるため、まずは目立たない場所で試してからにすることをおすすめします。
フローリングへは自然オイルや蜜蝋ワックスを塗ることも多いですが、これらは木材の乾燥を防ぐ目的であり、汚れ防止の効果はあまり期待できません。
Q.「無垢の杉材は10年後どうなる?経年変化はある?」
無垢杉材は、紫外線を受けると白褐色から黄色味がかった褐色へ変色します。
そのため、直射日光が当たりやすい部屋では家具の配置に気をつけてください。
また、床材やカウンター材など、表面が摩耗しやすい場所では、段々と木目が浮き上がる「浮造り(うづくり)」という現象が起こります。
古い神社仏閣などの柱や床材で目にしたことがある方も多いはずです。
木目が浮かび上がることで強度が落ちる訳ではないので安心してください。
むしろ、浮造りは「味わいや深みがある」として人気が高く、新品の木材を人工的に加工して再現している材料もあるほどです。
Q.「ヒノキ材とはどう違う?」
杉材と比較されるのが、同じく日本の固有種であるヒノキ(桧・檜)材です。
同じ針葉樹で見た目も近いことから、杉材と混同されがちですが、特徴は異なります。
(特徴の違い) | 〈杉〉 | 〈ヒノキ〉 |
生息地 | 北海道から沖縄県まで、日本全国にて植林される | 主に東北南部から九州の間にて植林される |
色味 | 辺材(樹皮に近い部分)は白褐色で、心材(中心に近い部分)は黒みがかった赤褐色で、色のコントラストが明確 | 辺材(樹皮に近い部分)は黄色味がかった白褐色で、心材(中心に近い部分)はピンク味がかった近い白褐色 |
木目 | 直線と曲線が入り混じり、はっきりしている | 杉よりも木目の幅が狭く直線的 |
強度 | 強度を示すヤング係数は、E70~100程度で、総体的にはヒノキより柔らかい | 強度を示すヤング係数(E値)は、E80~110程度で、総体的には杉より硬い |
香り | フィトンチッドなどの揮発性物質が主成分 | アルファピネンやボルネオールなどの揮発性物質が主成分で、杉より香りが強い |
価格 | 丸太価格はヒノキの65〜75%程度、製材価格は75〜80%程度 | 丸太価格は杉の130〜150%程度、製材価格は120〜130%程度 |
※それぞれの価格相場は林野庁|第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(3)を参考
「杉材はヒノキ材の代替品」「ヒノキが高いので仕方なく杉に」そんなイメージを持つ方も多いですが、どちらも木肌が美しく、高品質なものでしたら強度や耐久性にそれほど大きな差はありません。
そのため、多くの住宅で無垢杉材は使われています。
まとめ
日本が世界に誇る「杉材」ですが、そのメリットを知らない方も少なくないでしょう。
調湿性・断熱性に優れているため、快適な室内環境を保つのにとても効果的な材料です。
ただし、欠点やお手入れ方法、経年変化を知らずにご自宅へ採用すると後悔してしまうかもしれません。
そのため、木の特性を知り尽くし、それを十分説明してくれる建築会社を選ぶことが重要です。
私たち“フォレストブレス”は、1934年に製材所として創業して以来培った知識と経験を活かして、自然素材にとことんこだわった家づくりを行っています。
“小さな家でコトを愉しむくらし”をコンセプトに、無垢杉材を取り入れた事例も数多く手がけていますので、お気軽にご相談ください。
「自然素材」にこだわった家の新築・リノベーションは茨城県石岡市のフォレストブレスへ
フォレストブレスは、「自然素材」と「あつらえ設計」にこだわった高品質な住宅を数多く手掛けています。
“本当に快適な家に住んでほしい”という想いから、家づくりに以下のものを使わないことをお約束します。
- ・化学物質を含む接着剤を使用した合板、集成材
- ・防蟻防腐剤注入土台・グラスウール
- ・ビニールクロス・廃棄時有害なもの
お客様の住まい方や個性、価値観に寄り添い、“あなただけの住まい”をご提案します。
「呼吸が深くなる家」それこそ私たちが追求する快適なマイホーム。
オーガニックな暮らしを実現したい方は、ぜひご相談を。
定期的に見学会などのイベントも開催しておりますので、私たちの家づくりをご体感ください。